ほめどころ

がうがう

中村勘九郎・七之助 錦秋 特別公演 2017 行ってきました

兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール にて

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http://tokubetsu2017.com/

普段、歌舞伎を観に行きにくい人たちのために全国を周るって趣旨の巡業とのこと。ありがたやありがたや。
ちなみに僕は昔、中村七之助(画像左)に似てると言われたことがあります。

演目

一、歌舞伎塾
二、棒しばり
三、藤娘

歌舞伎塾で歌舞伎の基本や裏側をさらっと予習して、棒しばりで場を温めて、藤娘でスッキリと締める素晴らしい構成だった。

歌舞伎塾

歌舞伎で使う道具の解説や、ステージ上で女形がスッピンから完成まで生化粧と拵え、それを背景に中村勘九郎 七之助トークショーみたいな感じだった。
歌舞伎によく使われる演出として太鼓が取り上げられてた。太鼓のリズムで、雨や雪が降っていることを表現したり、風が吹いていることや馬を連れていることを表現したりと、抽象化の極地って感じだった。このあたりは、僕が能や歌舞伎をおもしろいと思うところの一つなので聞いてておもしろかった。
笛で鳥の鳴き声や太鼓のリズムでどんなシーンを表しているかのクイズコーナーがあって、これもまたおもしろかった。笛はわかりやすかったけど、太鼓はなかなか難しかった。答えを聞けば納得の表現だったので、日頃から意識して周りの音を聞いているかどうかによる気がした。

女形の化粧については、先輩二人に挟まれて解説されながらで緊張したであろう中村仲弥さん。化粧の色や形で女性の情報をいろいろ表現するというお話。今回は20才の未婚で流行のオシャレしてる娘か姫様の表現とのこと。解説を聞けばなるほど納得の化粧だったけど、化粧を見てその情報を得ようと思ったら至難だなと思った。

質問コーナーもあり、客席から挙手でいろいろと質問があがってた。一番盛り上がってたのは、客の8割がお姉さま方だったので、化粧落としの話だった。二人のオススメクレンジングオイル発表の時は会場が「おぉ~」ってなってたし、勘九郎さんのクレンジングオイルの通販小芝居みたいなのもなかなか受けてた。

七之助さんへ、結婚のご予定は?なんて質問があったけど、勘九郎さんや司会は、おっ!この質問来ましたねぇ笑みたいな前向きなノリだったけど当人は、ハハハ汗みたいな如実に温度差を感じる瞬間があった。会場も一瞬スッと静かになるような感じがあって、かなりセンシティブな話題にグイグイ踏み込んだんだなと思った。
一人で出来るものではありませんからハハハ、なんて感じでうまく答えてたけど、ちょっと自分と重なって心がキュッてなった。

その後は、残り二つの演目の簡単な説明があった。その中でも注目は大向うに言及してたこと。「中村屋!」ってやつね。 大向う - Wikipedia
一般的には、"天井桟敷席"で"男性"がある程度決まった"タイミング"で掛けるというセオリーがあるんだけど、今回はそれは無しでご自由にお掛けくださいという旨の案内が勘九郎さんからあった。歌舞伎に気軽に親しんでもらおうとする意図があるのかななんて思った。司会補佐の中村いてうさん登場で見得を切るシーンでも勘九郎さん七之助さんが「中村屋!」って声掛けてたし。身内やん!
やり方も簡単に説明があった。役者の登場と退場シーンや見得が決まった瞬間、拍手がしたくなるタイミングで、とのことだった。しかも、役者が全員中村屋一門なので掛け声も「中村屋!」だけ。わかりやすい!
司会の澤村國久さんが、この後の演目でも掛けるタイミングはたくさんあるので、是非勇気を出して声を出してください、とのことだった。応援上映によって調教された僕はもう言いたくてウズウズしていたのであった。

棒しばり

おそらくいちばん大元は狂言が原作で、ドリフのコントみたいに笑いの基本を押さえた愉快な演目。あらすじは、大名が外出しようとするが、家来が頻繁に酒を盗み飲むので棒に縛り付けて外出するんだけど、家来たちは試行錯誤して縛られたまま酒を盗み飲む。酒盛り真っ最中の最悪のタイミングで主人が帰ってくるって話。
内容としては普段通りの棒しばりだったけど、前述の大向う解放宣言のおかげで、登場シーンや縛られたまま扇子を器用に扱う決めのシーンでは、ちらほら屋号が上がってた。
個人的なポリシーとして、応援上映やマサラ上映なんかと同じように、演者の発声には声を被せたくない思いがあって、そのシーンは汐汲の舞の途中で唄もあったので拍手だけしてた。

藤娘

キンプリの太刀花ユキノジョウが舞っていることで一部界隈に有名なやつ。
藤の精に扮した女形が舞うんだけど、その女性らしい所作と衝撃的な登場シーンと早替りが見所。早替りと言うほど衣装の大きな変化は無いけど、もともと色鮮やかな衣装から更に鮮やかな衣装へどんどん変わっていくので見応えはとてもある。登場シーンも凄くて、開幕のブザーの後、会場が真っ暗になって静まり返った中、ひとり唄い出す。サビ(っていうのかな?)直前で会場のライトが全部付いて、舞台一面の藤と松の装飾の中、スッと藤の精がたたずんでいて唄い続ける、といった登場。ゾワワって鳥肌立っちゃった。
こちらも内容は普段通りだったけど、大向うが凄かった。この演目の中でも登場シーンと見得のシーンは初見でも絶対にわかる大向うチャンスで、拍手もすごい盛り上がるんだけど、今回は特に、いろんなところから掛け声が上がってて、完全に応援上映状態だった。僕も中村屋!って言えて気持ちよかった。通常の格式高い公演だと、大向うのルールが怖くて絶対に言えない。
周りの声聞いてても面白かった。ベテランっぽい人は「っかむらや!」って言ってたり、もっとベテランっぽい人は「らやぁ!」みたいな言い方してた。練習して来てたのか普段から大向うやってる人なのかわからないけど、かっこよかった。女性の大向うも少しいて良かった。よく通るいい声だったし、かなり勇気を出したんだろうなと思う。できることならその女性にいいね!してあげたい。

まとめ

とてもおもしろかったので、オススメです。是非とも観にいって欲しい。過去の演目みても、わかりやすくておもしろい、歌舞伎らしい演目が選ばれてて、歌舞伎初心者でもとっつきやすく、絶対に楽しめるすごく良い構成になっていると思った。
歌舞伎塾は歌舞伎の基本中の基本を話しているし、他2つもとても有名な演目なので、歌舞伎観慣れている人よりもむしろ、導入にちょうどいいのではと思う。

評点は・・・・

\二千点!/